ディスクブレーキとロードバイク 性能編
随分間が空きましたが、ディスクブレーキロードの性能について考えてみます。
メディアで取り上げられるのは、主に
1.ブレーキトラックの削減によるリム外周部の軽量化
2.雨天での制動力
3.ブレーキタッチの改善
とこの辺りだと思います。当然ですが、これは全てディスクブレーキ化した場合のメリットです。デメリットは触れられていません。ひとまず、挙げたメリットを見ていきましょう。
まず1についてですが、これは疑うまでもなく明確なメリットです。放熱性などの問題を抱えていたカーボンリム、特に構造上ブレーキトラック周りを強化しなければならないカーボンクリンチャーリムは圧倒的に軽くなると思われます。チューブラーはいずれにせよ必要な部分にブレーキトラックがあるので、軽くなるにしてもさほど劇的には変わらないような気がします。
アルミリムはStan'sがディスクブレーキ用の700cリムを出しています。シクロクロス用でInternal Widthが19mmと若干幅広ですが、重量は385gと比較的軽量です。同社のロード用リムが17mm幅で385gなので、リム幅+3mmで同重量というのは、比較的分かり易い指標になると思います。ただ、リムハイトが違うので全く同じ条件ではありません。
今の所本気で設計されたロード用のディスクブレーキリムは無いと思いますが、ブレーキトラックを廃する事でできる軽量化は現時点では未知数と言って良いでしょう。サイドウォールからブレーキトラックが無くなったとしても、ビードを引っかけるための強度やリム自体の剛性に影響してくるため、あまり過激な軽量化はできないと思います。ただ、放熱関係が一切なくなるカーボンリムではアルミよりも大きな変化があると考えられます。
次に2.ですが、これは常々疑問に思っている所で、確かに雨天でも効く事は効きますが、その代り盛大に音鳴りするのがディスクブレーキです。MTBをやっていれば、ディスクが濡れると音が出るのは割とメジャーな事象です。それに、ディスクが濡れれば制動力は落ちます。雨でもバッチリ!というのは、ロードが専門でろくにディスクブレーキ付きの車両に乗った事が無い人の妄想としか思えません。ローター径203mmにメタルパッド付4ポッドキャリパーでさえ、濡れると効きが落ちるのに、140mmローターの軽量キャリパーで雨天でもしっかり効くとは思えない、というのが個人的な感想です。もちろん各社専用パッドなどである程度は対策をするとは思いますが、雨天でも問題ないというのは少々言い過ぎではないでしょうか。
また、ディスクブレーキの制動力と雨天時のロード用タイヤのグリップのバランスについても良く考える必要があります。いくらブレーキが効いても、グリップしなければ意味がありません。その辺りはタッチが良くコントローラブルな油圧の特徴がカバーできると思いますが、効きだけを前面に押し出した宣伝は少し考えが浅いと思います。
最後に3.ですが、これは恐らく誰でも享受できるメリットです。油圧のタッチはワイヤー式に比べると圧倒的で、引きは軽くコントロールもし易く感じます。もちろん味付け次第ではコントロール性は変わってきますが、タッチが良くなるのは間違いないでしょう。
ただ、油圧の負の面としては、管理が面倒な点があります。
当然ですが、油圧なのでブリーディングが必要です。基本的には買ってきてポン付けは出来ませんから、ブレーキと合わせてブリーディングキットを購入するか、ショップに依頼するしかないでしょう。そう高いものではありませんが、ワイヤー式ブレーキには必要ない作業・パーツが必要になってきます。また、ホースがフレーム内蔵になれば、ブレーキを外す度にブリーディングする事になります。ポジション変更などでホースが足りなくなれば、高価なホースを丸ごと交換する事になります。フルードには寿命がありますから、最低でも年1回はフルードを入れ替えなければなりません。
そう、油圧は面倒なんです。そして、何かとトラブルが起きます。
私が今まで使ってきたブレーキは、大抵何かしらのトラブルが起きています。シマノのXTとZeeは特定箇所からのオイル漏れでレバー交換、Hopeはリザーバータンクからオイルが漏れてシールを数回交換(初期不良)、ととにかくトラブルが起きます。使い方云々もありますが、シマノの人曰く油圧ブレーキは非常に繊細なので、どうしてもこういった不良が出易くなるそうです。
これが、油圧をあまり得意としないメーカーが作ったとしたらどうでしょうか。不良のオンパレードになる可能性は十分にあります。シンプルなロードが非常に面倒な物になってしまわないか、と心配しています。
先日Sramの新Redが発表されたので、別記事で価格等を見てみる事にします。