ディスクブレーキとロードバイク 重量編(ブレーキユニット&コンポーネント)

 先日はディスクブレーキロードのホイールとフレームセットの重量について色々書きましたが、今回はブレーキとその他に影響があると思われるパーツの重量変化などを考えてみます。

 ブレーキは当然ながら油圧になると思います。現在は過渡期というか、各社模索している所なので様々な選択肢がありますが、大きく分けると

1.ワイヤー作動+メカニカルキャリパー

2.ワイヤー作動+油圧キャリパー

3.ワイヤー作動+油圧コンバーター+油圧キャリパー

4.フル油圧システム

の4つです。4はColnago C59 DiscでFormulaとColnagoがコラボして作っていましたが、まだ個別市販はされていなかったと思います。1~3までのメリットは既存のデュアルコントロールレバーを使用できる点ですが、それが故にシステムが複雑になるデメリットが生じています。

1.ワイヤー作動+メカニカルキャリパー

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http://www.bikerumor.com/2012/12/16/review-hayes-cx5-mechanical-disc-brakes-for-cyclocross-road/

 既存システムの中で最もシンプルでローコストです。メカニカルキャリパーはシマノとHayesとAvidから出ています。通常のワイヤードタイプなら煩雑なエア抜きや油圧関連特有の扱いの面倒臭さが無いので、シンプルかつ手軽にディスクブレーキの恩恵を受けることができます。ただし、メカニカルディスクの欠点として油圧と違い片面のパッドしか動かない点、リターンスプリングが強くキャリパーブレーキ以上に握力が必要な点があり、ディスクブレーキである事のメリットは享受できますが、強いてメカニカルディスクブレーキを導入する必要は無いと思います。重量はHayesの場合キャリパー1個で200g、ローターが100g程度なので、単純に考えても前後600gと昨今の軽量キャリパー(前後250g)に比べて350gの重量増となります。

2.ワイヤー作動+油圧キャリパー

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http://www.bikerumor.com/2013/01/29/trp-showing-new-mechanical-hybrid-hydraulic-disc-brake-calipers-for-road-bikes/

 これは現時点ではTRPしか採用していないと思われるシステムですが、要はキャリパー自体にマスターシリンダーを合体させ、それをワイヤーで引くというものです。コンバーター内蔵型といった感じでしょうか。メカニカルと違いパッドが左右からローターを挟むのでタッチやコントロール性は格段に上がる上、これも既存のレバーとの併用が可能です。ただし、ワイヤーの持つデメリット(フリクション、ケーブルルーティングの制約)はそのままです。重量は194gとメカニカルと同程度に収まっているので、使うならこちらですね。

 

3.ワイヤー作動+油圧コンバーター+油圧キャリパー

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http://www.cxmagazine.com/trp-parabox-hydraulic-disc-brake-system-for-cyclocross-first-ride

 これはTRPのParaboxです。他にHopeからも出ていますが、ステム付近でワイヤー→油圧に変換するユニットです。前後用のマスターシリンダーが内蔵されており、ワイヤーで引き油圧システムを作動させるというもので、比較的ワイヤーは短いのでフリクション等の低減には良いかもしれません。ただし、Paraboxの場合でキャリパーと変換ユニットの重量が約490g。これにローターが1枚100g程度なので、ブレーキシステム全体で見ると700g程度となります。意外と軽く仕上がっていますが、それでもキャリパーブレーキに比べるとプラス450gと大幅な重量増となってしまいます。コラムにマウントするので、ポジションの制約が出るのも場合によっては致命的でしょう。せめて本体を-17度ぐらいに作ってくれれば良かったのですが、写真の通り0度なので-6度のステムでもスペーサーを噛まさないと干渉しそうです。あとは、Paraboxに限って言えば、キャリパーがTRP限定になるのも考え所ですね。MTBでもTRPの油圧ディスクがありますが、性能はいまいちと言われています。そもそもTPRとはTektro Racing Productsの略で、かの有名なTektroのハイグレード向けブランドなので、個人的には油圧のようなデリケートな部分のお任せするのは少々心配なのです。

4.フル油圧システム

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http://www.bikerumor.com/page/2/?s=Shimano+Disc

 最後に、今各社が開発中であろう油圧デュアルコントロールレバー+油圧キャリパーです。最近シマノの油圧ディスクブレーキの情報も所々リークされていますが、もし油圧ディスクが当たり前になるとすれば、間違いなくこのシステムが主流になるでしょう。ただ、恐らくほとんどのメーカーはレバー内部のスペース確保のために電動シフトを採用するはずなので、コンポーネントとブレーキセットで非常に高価になると思われます。Sramはワイヤードシフトで油圧レバーを開発していますが、非常に見た目が奇抜になるのが難点です。
電動のメリットは、電動シフトのコントロールユニットさえ用意できればサードパーティのブレーキメーカーでも参入できる所ですね。これまでと違い、ブレーキ周り+デュアルコントロールレバーは選択肢が広がるかもしれません。電動が出た当初はこんなメリットがあるとは気付きませんでしたが、もしかしたらそれを見越して各社は開発していたのでしょうか。重量は残念ながら公開されていませんが、恐らくレバー内にマスターシリンダーを仕込むので電動用のレバーよりは重くなるはずです。となると、軽量なワイヤードのレバーといい勝負になると思われます。

 

 やはり、ディスクブレーキ化に伴う重量増は避けられないのではないでしょうか。特にブレーキユニットの重量増が顕著で、現在のワイヤードレバーを使用するシステムならプラス300~500g、油圧レバーが出たとしてもやはりプラス200g以上にはなると思います。加えて、恐らく電動コンポーネントとセットになるでしょうから、ここでも重量増になってしまいます。そう考えると、現時点では恐ろしく高価でしかも重量増を招く事になります。そこまでして油圧ディスクブレーキが必要だろうか?というのが私の感想です。