ディスクブレーキとロードバイク 重量編(フレーム&ホイール)

 最近ふとバイクラを読んでいると、今年のトレンドとしてディスクブレーキのロードバイクが流行る、といった内容の特集が書かれていました。去年辺り、特にUCIシクロクロスでのディスクブレーキ使用を解禁した頃を境に急にヒートアップしているカテゴリなわけで、わざわざ記事にしてもらわなくても誰しもがある程度の知識を得ていると思います。

 しかし、挙げられるメリットと言えば

1.ブレーキの引きが軽い

2.雨でも変わらない制動力

3.ブレーキトラックが不要なので外周部(リム)の軽量化が可能

 この3つばかりです。ブレーキユニットの重量、フレームセットの重量に関しては全くと言って良いほど語られません。

 そこで、今回は重量の観点からディスクブレーキロードを考察してみるとします。

 ここで件の記事に戻りますが、ColnagoC59 Discの場合はフレーム重量はキャリパーブレーキのモデルより20g軽く、バイク全体だと40g重くなるそうです。つまり、ディスクブレーキ用のポストマウントの台座を前後に付ける方が、キャリパーブレーキの台座を付けるよりも軽く仕上がるという事になります。しかし、カーボンパーツのスペシャリストであるEnveのフォークの重量を見ると、テーパードのロード用フォークが350gなのに対し、ロードディスク用モデルは435gとなっています。カーボンのスペシャリストが作っても85g差ができるのに、Colnagoはどうやって軽量化したのでしょうか。私の考えでは、元々Colnago C59自体が軽量さを売りにしたフレームではない事から、ディスク仕様を作る段階である程度軽量化を行ったのではないでしょうか。ディスクの方が重いと「やっぱり重いんだね」という市場の反応が返ってくるのは間違いありません。それを避けるために、マーケティング的な観点から若干の軽量化が行われたのではないかと推測しています。もちろん、応力がかかる場所が大幅に変わるので本当に軽くなっているのかもしれませんが、こればかりは現時点では真相は不明です。

 次にホイールですが、リム外周の軽量化がどのぐらいのレベルになるかは、各社が本気で開発し始めるとまた変わってくると思いますが、現時点ではどうでしょうか。キャリパーロード向けの軽量リムを出しているStan'sが、Iron Crossというディスクブレーキ向けの700cリムを発売しました。幅23.2mmで385gとなっています。対するキャリパーロード用のAlpha 340は幅20.0mmで385gです。また、29インチのMTB用、Crestが24.4mmで380gです。つまり、シクロクロス用と29インチ用はほぼ同じスペックとなっており、ロード用は幅が狭い分軽いはずがブレーキトラックの影響で重量増となっている事になります。昨今はロードでも幅広リムを採用するメーカーが増えているので、無暗に軽量な狭いリムを作るとは思えません。となるとやはりアルミリムの重量レンジは軽くても>350gになるでしょう。

 カーボンリムではどうでしょうか。フォークと同じくEnveで考えてみます。29インチのXC用リム(31mmハイト、幅24mm)は、クリンチャー・チューブレス対応で385g、チューブラーで280gです。これに近い同社のリムでSES3.4のフロント用(35mmハイト、幅26mm)がありますが、こちらはクリンチャーで435g、チューブラーで340gです。SES3.4の方が一回り大きい事を考えても、この場合ではブレーキトラックを廃する事である程度*は軽量化ができると考えて良さそうです。肉厚や形状を自在に変えられるカーボンにおいては、放熱性の問題が消える事も含めディスクブレーキ化は一定のメリットが見られるという事ですね。

*SES3.4は空力特性の為にリムハイトの全体に渡って幅広なため、かなり重くなっていると考えられます。対するXC用リムは先細りの形状なので、断面積的にはかなり差があるはずです。ロード用のRoad25(25mmハイト、22mm幅)の場合はチューブラーで250gという重量を達成している事を考えると、一定の軽量化は望めるものの決して大幅ではないでしょう。ただ、特にカーボンクリンチャーで深刻な問題となるブレーキトラックの熱耐性に関して一切心配する必要がなくなる事は大きなメリットです。

 ハブはセンターロックでも6穴でも同様ですが、これは従来のリムブレーキ用ハブから一気に重量増となるでしょう。軽量なロード用ハブと頑丈なMTB用ハブを比較しても両者の設計思想自体が違うので意味がありません。そこで、ごく一般的な高性能ハブであるDT240sを見てみます。ロード用の場合は105g+209g=314g、MTB用センターロックディスクハブの場合だと145g+245g=385gで71g重くなります。

 軽量化を追求する場合も考えて、ドイツの有名な軽量パーツメーカー、Tuneのハブを見てみる事にします。まずMTB用で最軽量のPrince/PrincessがF/R:103g/196gで合計299g。対するロード用がMig45/Mag150がF/R:46g/156gで合計202gです。つまり、軽量ホイールを組むにしてもハブ単体では100g程度の差が付く可能性もあるという事になります。

 外周部の軽量化がこの差を埋める事が出来れば、ホイールセット自体の重量増は避けることができます。ただ、リムの軽量化とハブの軽量化は外周部と中央なので大きな差があり、実際はリムが軽くなる方がかなり大きなメリットを生むので、とりあえず一般的に言われる外周部の軽量は大幅ではありませんが認めても良さそうです。ただ、フロントからはラジアルスポークが消え、スポークカウントは前後24h以上になるでしょう。エアロスポークの使用はDT Swiss曰くディスクブレーキでも問題ないそうですが、ディスクローターが付く分ハブフランジは中央に寄るためフロントは左右のスポークテンション差が目立つようになるか、反対のフランジも中央に寄せテンションをある程度均一化させる代わりに横剛性を犠牲にするか(クロス組なのでさほど問題ないかもしれませんが)、といった選択に迫られる可能性はあります。となると、ブレーキトラックの無いリムを開発する際にはフロント用のオフセットリムも合わせて開発されるかもしれません。

 

 つまり、ここまでをまとめると、フレーム重量に関しては現時点ではディスクブレーキ仕様の方が重くなると考えられるが、C59では逆にディスクブレーキ仕様の方が軽量にできている。ホイールに関しては大幅にセットで軽量化するには至らないが、重量配分はハブよりになり外周はある程度軽量化できる可能性がある。といったところでしょうか。思った以上に長くなったので、次に問題のブレーキユニットの重量について触れたいと思います。